「いつもなら混んでるんだろうね」
夕飯時にTVを眺めながらオフクロが言う。
その画面では京都の鮎の話題。
コロナの影響は甚大だが、
夏の風物詩として多くの人に支えられているという。
「そういうふうに撮っているんだろうけど、
このご時世でも京都はやっぱり優雅に見える」
「それはきっと歴史に裏付けされた、
たくましさとプライドがあってこそだろうね」
30年ほど前、仕事で京都を訪ねた時。
とある老舗の漬物屋さんの店主が、
冗談めかして言った。
「今でこそ東京が日本の中心ですけど。
私たち京都人は心のどっかで思ってます。
東京都は『ひがしきょうと』でしょ、と」
言い得て妙。
さらに、それを言えるのは京都人だけだなと、
頷かずにはいられなかった。
時代の流れとともに、
その姿を大きく変化させる東京。
時代はどうあれ頑なまでに、
昔ながらの姿を守ろうとする京都。
そこに優劣も善悪もない。
あるとしたら役割の違いだろう。
蒸し暑い夏の京都で、
川のせせらぎを聴きながら頂いた川床料理を、
懐かしく、おかしく、思った。