「ちょっと付き合って」
朝食とコーヒーを買いの行く前に、
KYSを誘い出した。
「え? クルマ?
コンビニはそんなに離れてないだろ?」
いぶかしむKYSを乗せて隣町へ。
すでに日は登っているとは言え6時30分過ぎ。
なのに、目的地の駐車場には数台のクルマがあり、
カメラを構える人や歩く人もいた。
きれいに晴れた空。
遠くに霞む稜線。
咲き乱れる花。
5年前、ここにKYSの奥さんの遺灰をまいた。
「そっかぁ」
KYSはそう言うとしばらく黙って立っていた。
35年ほど前、KYSと奥さんは新婚旅行でここへ来ている。
山を眺め、花を眺め、
そして、しゃがみ込むと、
何かを話しているようだった。
少し離れた所で見るともなく見ていると、
ヤツは立ち上がって真上の空を見て、頷いた。
「こういうのは先に言ってくれるか?」
帰りのクルマでKYSが言う。
「そうだな。すまん」
「ありがとうな」
その後、コンビニに寄って、
おにぎりとコーヒーを買った。
さぁ、走ろう!