Spiral-World

めくるめく世界での個人的な日記

夢の続き

「バイク復帰2年目、どうだった?」

 

焼肉をつつきながらICMRさんが訊く。

 

「整備は去年で一通り終わって、

 今年はタイヤも新しくして。

 安心感もあってか1日でかなりの距離を走れましたね」

 

「まさかお前がヤマハに乗るとは。ホント意外だわ」

 

「たぶん、俺のほうがずっと初ヤマハに驚いてます」

 

MWさんはすでに4杯目のハイボールをオーダーし、

カルビを網にのせながら言う。

 

「つーか、あんだけの事故しといてよく復帰したな」

 

「去年55になったので、

 このタイミングを逃したらもう乗れないだろうと」

 

ボクが北海道へ移住してすぐの頃。

友だちはおろか知り合いすらいないボクは、

バイクを通じてお二人と出逢った。

 

「最初は3人で走って。

 その後やたら人が増えたけど、

 結局はこの3人に戻ったな」

 

一時は仲間内だけで最大10人ほど。

他のクラブと合わせて30台近いツーリングもあった。

 

時にはクラブを作ろうとか、

他のクラブに参加しようとか、

いろんな意見があったが、

そのたびにボクら3人が断った。

 

組織化に伴うルールやシガラミと、

義務的にバイクに乗るのがイヤだったのだ。

 

「あの頃クラブ作っていたら、

 まだ乗ってる人がいましたかね?」

 

「どうだろうねぇ」

 

ICMRさんがニヤニヤしながら言う。

 

「ま、どっちでもいいじゃん」

 

MWさんは網の上のホルモンを転がしながら言う。

 

ボクらの今年初にして最後のツーリングが、

終わろうとしていた。