「あら、1人? 珍しいわね。
と言うか、初めてよね?」
スナックのママに言われるまでもなく珍事。
ボクは1人ではスナックに行かない。
「オトナになったのね」
カウンターでそう冷やかされて、
素直に相づちを打ち笑っているのだから、
確かにオトナになったのだろう。
「なにかの会合の帰り?」
「うん。ちょっとね」
「なによ? 秘密の集まり」
「逆だよ。ヒマなオヂサンたちのただの飲み会」
しばらくして良い感じのお客さんたちが来て、
カラオケが始まったので退散。
と、ママが店先まで見送りがてら、
紙袋を渡してくれた。
「来てくれると分かっていれば、
もっとちゃんとしたの用意したんだけど」
なかをのぞくとマドレーヌ。
「あはははは。ありがとう」
「おめでとう」
ほんと、ありがとう。