派手なガップポーズも歓喜の声も無かった。
最初のマッチポイントをサービスエースであっさり決め、
初の栄冠を手にした彼女は、
サンバイザーのつばを深く下ろして涙を隠した。
その仕草には憧れの舞台で勝ち切れた喜びの大きさと、
憧れの選手への敬意と、
それを破ってしまったことへの畏怖が混じり合っていた。
しなやかな黒豹のようにシェイプされた身体。
それから産まれるパワーと粘りあるプレーは、
まるで全盛期のウィリアムズ姉妹そのもの。
デジャヴを観ているような感覚に囚われた。
試合中のセリーナの言動や表彰式での観客からのブーイングに、
いろんな意見が出ているようだが、
それをしっかりと収めたセリーナと彼女のスピーチに、
そして最後は大声援で彼女を祝福した観客にも、
大きな拍手を送りたい。
おめでとう
あなたの素晴らしいプレーに心が震えた。
ありがとう。