吉田沙保里が引退を表明した。
でも、発表されるかなり前から、
多くの人が「この日」を予感をしていたと思う。
「霊長類最強女子」との物騒なキャッチが霞むほど、
彼女の強さはどこか現実離れしていた。
無敗記録が伸びたとニュースになれど、
それはいつからか日常化し、驚きは薄れていった。
きっと彼女自身にもそんな想いがあったのではと思うほど、
女子アマレス界における孤高の人であった。
だから、と言っては不謹慎かもしれないが、
最も印象深かった彼女の姿はリオ五輪決勝で敗れた時だ。
五輪4連覇を逃し15年続いた個人戦連勝が206で途切れ、
涙にくれる姿は目に焼き付いて離れない。
その後、バラエティやCM出演が増え、
どんどんキレイになっていく姿を微笑ましく眺める一方で、
彼女の中から何かが失われているのを感じていた。
そして、DAILY MOREに掲載されたインタビューの写真を見て、
それは確信に変わった。
彼女にとっては「世界最強」を証明する以上に、
もう女性として輝き幸せを掴む方が重要になったのだろうと。
リオでの敗戦後、彼女は泣きながらインタビューに応えた。
「たくさんの人に応援していただいたのに、
銀メダルで終わってしまって申し訳ないです。
日本選手の主将として、
金メダルを取らなきゃいけなかったのにごめんなさい」
お願いだから謝らないで。
メダルなんてどうでもいいよ。
胸を張って日本に帰って来て。
TVに向かって念じた。
だって、あなたのおかげで、
日本人であることを何度誇らしく思えたことか。
ありがとうございました。
おつかれさまでした。