Spiral-World

めくるめく世界での個人的な日記

強さの行く末

呆れるしか無い。

ワールド・ボクシング・スーパーシリーズWBSS)の、

バンタム級準決勝に臨んだ井上尚弥は、

またしても、の強さでエマヌエル・ロドリゲスを下した。

先日も書いたがロドリゲスはIBF王者。

井上と同じ26歳。19戦全勝で12KOの猛者。

1Rこそ「それなり」の攻防が見られたのは、

身長とリーチで勝るロドリゲスが接近戦を仕掛けたから。

珍しく井上が退きロープに詰められるシーンがあったが、

相手のパンチをダッキングやスウェーやスリッピングアウェー、

ブロックやロープワークでかわしつつ、

カウンターを交えて上下に強弱のパンチを打ち分けていた。

均衡して見えた流れが変わったのは1Rの1分過ぎか。

ロドリゲスのワン・ツーを、

井上がブロックしたあたりから様子が変わった。

距離的には有利なはずのロドリゲスは井上に詰め寄るものの、

なぜか手数が減り慎重になったように見えた。

そして2R。

井上は慎重に距離を測りながらもほぼリング中央で打ち合い、

開始から約30秒、コンパクトな左フックで最初のダウンを奪った。

なんとか立ち上がったロドリゲスは、

呆然としながらファイティングポーズを取るも、

クリンチさえ許されずボディへのワン・ツーで再びダウン。

四つん這いになって怯えた表情で自陣を見つめ、

何度も首を振る姿には悲壮感すら漂っていたが、

全勝王者の威厳か、なんとか立ち上がった。

しかし、為す術無く3度目のダウンでレフェリー・ストップ。

完勝。

それ以外の言葉が見つからない。

ただ、時折、顔への左フックが大振りになり、

何度も身体のバランスが崩れるのが気になった。

「力みがあった」

試合後に本人が振り返ったように、

「勝って当然。何秒で倒すのか?」との周囲の期待を、

意識しまいとするほどに体は硬くなっていたのかも。

それを見越してか積極的に出てくる相手に、

井上がムキになっているのかと思った。

でも、試合後にスローで見ると最初のダウンを奪う直前の、

大振りの左フック2発さえ罠だったのではと思えるほど、

クリーヒットしたのはコンパクトで鋭かった。

右のボディを突き刺し、

相手が身体を後ろへ少し下げてできたスペースと、

そこから繰り出した右を逃さず、

カウンターで的確にアゴを撃ち抜いている。

KOに至るまでには、

無敗王者同士のハイレベルな駆け引きがあったはず。

しかし、終わってみれば、井上はほぼ無傷。

試合後に行われたドネアとのフェイスオフは、

まるで試合前のような平常さで。

もともとイケメンの井上が涼し気に微笑むのを見て、

背筋が寒くなったのはボクだけじゃないはず。

恐るべし。

それ以外の言葉が見つからない。

井上の強さ。

それを飲み込み打ち破るのは、

井上の強さがもたらす孤高ではないか?

そんなことすら思ってしまった。

いずれにせよ、あっぱれ。

おめでとうございます。