Spiral-World

めくるめく世界での個人的な日記

薄れゆく常識

WBAスーパー&IBF世界バンタム級王者の井上尚弥が、

WBO同級1位ジェイソン・マロニーをKOで倒した。

井上にとって初となるラスベガスでのタイトルマッチは、

コロナの影響で残念ながら無観客試合となったが、

7R2分59秒でのKOで自ら華を添えた。

中盤以降のKO勝利は多くの人が予想していた通り。

世界戦で強者相手にKOするためのプロセスと仕上げで、

観る者を「さすが」と唸らせるのだから、ホントにスゴい。

井上の強さを誇張するためではなく言うが、

マロニーは良い選手だった。

足と上半身を常に動かして的を絞らせず、

丁寧なジャブからボディやフックやストレートを繰り出し、

何度もヒットさせていた。

だが、パンチ力の差か、じわじわと井上が攻勢に。

そのまま押し切るかと思った5R、

なぜか井上が距離を取り、変わってマロニーが前に出る。

しっかりブロックはしているものの、

井上がロープに押し込まれ連打を受けるシーンがあった。

「あれ? どーした?」

不安が頭をよぎってすぐ、井上は距離は取りながらも、

要所要所でフックやストレートを打ち込み、

終盤にはマロニーがグラつくシーンがあった。

で、6R開始早々に井上が左フックでダウンを奪う。

マロニーは足を使い距離を取ろうとするが、

井上は効果的にスペースを潰して追い詰める。

7Rも足を使い距離を取ろうとするマロニーに対し、

井上は飛び込むように左ジャブをヒットさせながら、

何度もロープ際に追い込む。

そこから脱出しようとしたマロニーが、

左からのワン・ツーを繰り出そうとした刹那、

井上の右ストレートがカウンターで炸裂。

マロニーは23戦のキャリアで自身初のKO負けを喫した。

井上は試合中に足を気にする素振りを見せたし、

自身も「ツッた」とコメントしている。

5Rの戦い方は、その影響があったのかもしれない。

だが、その5Rの戦い方こそが、

7RKOにつながったように思えてならない。

スタミナがあり常に動き続けるマロニーをKOするのは、

簡単ではない。

そう考えた井上はあえて距離を取って攻めさせ、

相手が前がかりになったところで迎え撃ったのではないか?

とまれ。

ドネアとの激戦もあったし、初のラスベガスだし、

コロナ禍だし、無観客だし・・・。

などと、あれこれ考えながら観ている者の、

つまらない言い訳や常識を、

今回も素晴らしいボクシングで見事に吹き飛ばしてくれた。

どんな状況に置かれようと、それをプラスに転じさせる。

言葉にするのは簡単だが、

その対応力無くして世界では勝ち抜けないのだろうし、

井上尚弥選手は、その力を間違いなく持っている。

おめでとうございます。

ありがとうございました。