Spiral-World

めくるめく世界での個人的な日記

絶望に堕ちた道化師

「JOKER」を観た。

すごい作品だった。

「アメコミもの」とか「シリーズもの」とか、

ヒース・レジャーじゃないから」とか、

くだらない前置きは全部、すっトぶ。

ホアキン・フェニックスのぎこちない笑い声が、

全編122分を通じて響く。

だが、客席に笑いは起きない。

一度も。

とても悲しく、とてもやるせないからだ。

かと言って、あまりに深いその絶望に涙すら流せない。

佳境に差し掛かる頃、

長い階段の踊り場で踊る姿にそれまでのアーサーのぎこちなさはなく、

ジョーカーへの「羽化(変貌)」を知らされる。

その舞いは、残酷で、物悲しく、でも美しい。

作品の濃密さに時間軸が歪められ、

その世界から抜け出せなくなる。

すごい作品だけが持つ独特の重力にからめ捕られ、

客席の照明が点いてもしばらく立ち上がれなかった。

ぜひ親子で観てほしい。

そして、この「ありふれた絶望」と、

それが人をいかに変えてしまうのかについて、

一緒に考えてほしい。

そういう映画だった。