Spiral-World

めくるめく世界での個人的な日記

ぶっ刺しヤキ入れ女子 #4

「先月、お話しできなかったのですが」

彼女は鍼を打ちながら何気なく言った。

「6月でここを退職することになりまして」

「え? ホントに?」

「はい。でも、引き継ぎはちゃんとしておきますので」

「いや。それは困ります」

ホントに困る。

お世話になっていた整体が閉院したのが、つい先日。

その上、鍼まで失うとなると、

ボクの体調維持はかなり危うい状況になる。

「みんなしっかりしてますから安心して下さい」

「それは分かっていますが、誰でも良いわけじゃないので」

彼女は声を潜めて言った。

「実は7月から独立開業するので、

 後で連絡先をお渡ししますね」

「ありがとうございます。

 でも、もしご迷惑なら遠慮なく言って下さいね。

 フラれるのには慣れてますから」

「あはははは。分かりました」

そんな話しをしながら約1時間、鍼とお灸をたっぷり。

ひと安心して街に出た。