前回の続き。
最近やたらと目にする高齢者狙いの強盗や、
超繁華街での高級店舗襲撃など、
都会でも地方でも荒んだ空気が蔓延している。
ボクも10代後半から20代前半まで、
かなり困窮し荒んでいたが、
それでも一線を踏み越えずに済んだのは、
支えてくれる人がいたからだ。
「一切れのパン」は生命の危機に瀕した人間が、
いかに救われたかが描かれた物語だ。
第二次世界大戦中に捕虜となった主人公が、
輸送中の貨車から脱走する際に、
仲間から布でくるんだ包みを渡される。
「この包みにはパンが入っているが、
ほんとの生死の境まで食べずに」
貨車からの脱走はなんとか成功したものの、
その後の逃亡は苦難の連続だった。
常に追われ、飢え、
頼れる人もおらず、安息も無く。
幾度となく包みを開けそうになったが、
そのたびに仲間からの助言を思い出した。
まだ大丈夫、あともう少し、
朝になったら、あそこまで行ったら、
このパンを食べよう。
包みに触れながら自分を鼓舞し続け、
なんとか自宅に辿り着いた。
「この一切れのパンが無かったら・・・」
愛する人にその話をしながら包みを広げると、
中に入っていたのは木片だった。
今だって金銭的にも心理的にも余裕なんてないし、
ぜんぜん聖人君子じゃないから、
叩けばいくらでもホコリが出る身。
それでも10代後半からの10年くらいを思えば、
かなり恵まれた環境にいる。
破綻せずになんとか生きて来られたのは、
人に恵まれたからだ。
お金は大事。とても。
でも、ボクのほんとの窮地を救ってくれたのは、
いつも「人」であって、
お金であったことは一度も無いと断言できる。
「一切れのパン」を持つことができれば、
けっこうな数の犯罪は無くなるのではいかと思うのは、
あまりにも短絡的だろうか?