昼間の会議をドタキャンしたものの、それ以外は大過なく。
部屋に戻ってハイボールを飲みつつ、
今回の企てについて考える。
ことの発端は15年ほど前。
ビジネスパートナーであるメーカー販社の、
当時の支社長との酒席でのバカ話だった。
弊社のお客さまのある方と、
そのメーカーの協業について投げかけた。
「全国各地の販売店と太いパイプがあるのだから、
それを活かさないのはあまりにもったいない」
そう息巻くボクに、その方もおもしろがって言った。
「確かにウチはそういうPRが得意じゃないよな。
もっとローカルでアットホームな雰囲気で、
でも楽しさが伝わる方法ってあるのかもね」
その方は程なく役員としてメーカー本社に戻られたが、
ボクとの話を覚えて下さっていて。
ある時、そのアイディアが具現化しそうな瞬間があったのだが、
残念ながらお蔵入りになった。
「こういうこともある。でも、諦めずに。
というか、そのうち俺が社長になるから、必ずな」
カッカッカとイタズラっぽく笑って電話を切った。
その方は、それからしばらくして亡くなられた。
横浜で行われた葬儀に参列した時のことは、
今でもはっきりと覚えているし、
お墓が実家の近くなこともあり、
たまにお参りをさせて頂いている。
あの時の約束が叶うのか?
それはボクには分からない。
でも、諦めはしない。
酒は進むが酔いはしない。
そんな夜だった。