「かなりスッキリしましたね」
床屋の若旦那のNROくんは鏡越しにボクの頭を眺め、
満足げな表情。
生え際付近からこめかみの最頂部への刈り上げは、
これまで何度か薦められるも断ってきた。
大正の頃よく見られたそのスタイルは、
小顔でスラッとした若い子ならばカッコいいが、
白髪まみれのヂヂイならただ古臭いだけだ。
「大丈夫ですって。そうならないギリでやりますから」
いつも通りを最も嫌う人種である髪切り職人は、
マンネリ化した髪型をようやく変えられるとあって、
終始楽しそうだった。
カット方法と髪型を変えたのは、
11月末頃からクセっ毛がかなりひどくなったから。
お笑い芸人だった頃のたむけんがほぼ通常。
年末になってからは、
グネった部分をビューラーで跳ね上げたような、
かなり難易度の高いカールとなり・・・。
「これね、たぶんシャンプーを替えたら治ります」
NROくん曰く、
ボクが愛用している「ほぼ石鹸」的なシャンプーは、
頭皮には良いがクセが出やすいのでは?と。
「なので、以前のように前髪を横分けにして、
少し持ち上げましょう。
それなら手入れ無しでもバッチリですから」
確かに以前はその戦法で凌いで来た。
クセを利用しての横分けは、
寝起きの手ぐし3回ほどでガッチリ固定されるので、
とても楽だし、多少のことではビクともしない。
ある意味、超高性能な形状記憶合金的で、
カツラと勘違いされるんじゃ?ってくらいだ(笑)
なので、40代前半からの10年ほどはその髪型で通したが、
その後、髪をおろすようにしたのは、
年齢と無関係ではない。
「大丈夫。
あんたはその髪型の方がずっと似合うよ」
横のお客さんのヒゲを剃っていた母さんが、
手を止めずにフォローしてくれた。
その言葉を信じてしばらくはこの髪型で行く。
ありがとうございます!