羽田から電車で移動して、最寄り駅からはバス。
ようやく人混みから抜け出せたので、
実家へ入る前にと喫煙所へ。
珍しく誰もおらず、
しばらく1人でタバコを吸っていると、
引っ越し業者のユニフォームを着た男性が、
喫煙所に入って来た。
で、ボクがいることに気づくと、
少し戸惑った素振りをしたので、
今日はもう終わりですか?と、声を掛けた。
「はい。これから帰ります」
「じゃあ、運転の前の一服ですね」
ボクがそう言うと、
うなずきながらタバコに火を付けた。
今や多くの会社が勤務時間内の喫煙を禁じており、
それは車内であっても同様だ。
社名入りのユニフォームやクルマでタバコを吸っていると、
苦情が来ることも珍しくない。
ボクは学生の頃によく引っ越しのバイトをした。
ハードだがそこそこ給料が良く、
しかも日払いだったので、
慢性的で重症な金欠病だったボクには、
実にありがたいバイトだった。
文字通り山のような荷物が少しづつ減り、
すべて運び終わった時の充実感と一服のウマさは、
今でも思い出せる。
「おつかれさまでした。
帰りの運転も気をつけて」
おいしそうにタバコを吸う男性に、
声を掛けて実家へ戻った。