KYSと飲んだ帰りのタクシーでのこと。
乗せて下さったドライバーさんとの会話が楽しかった。
「夜で女性のドライバーさんって珍しいですよね」
「子どもが大きくなったので、
いろんな時間帯で働けるようになりました」
タクシーに乗り込む時にチラっとお顔を見ただけで、
あとは話していての感じでは、
せいぜい中高生くらいだろうと思っていたら、
なんと成人した社会人だという。
「そんなに大きなお子さんが?
お若く見えたので、って言うか、
実際にまだお若いですよね」
「あら、うれしい。でも、何も出ませんよ」
10代後半で結婚、出産し、
今はお子さんと2人で暮らしているという。
「赤ちゃんの頃からどんなにグズっていても、
車に乗せると泣き止んで寝てくれたんですよ」
そのまま起こさないように運転するクセが付き、
それがタクシーの仕事でも活かされていると思うと、
彼女は言った。
「とても丁寧でスムーズで。
安心して乗っていられます」
「あっ、もしかして私、
それとなく自画自賛しちゃいましたか?」
ボクが北海道で暮らしていることを話すと、
いつか息子さんと2人で北海道をドライブしたいという。
「その時は息子にずっと運転させて、
私はコーヒーとお菓子を片手に、
好きなだけ良い景色を眺めて、
好きな時にウトウトするんです」
「良いですね、それ。
ドライブデートにぴったりなコースが、
北海道にはたくさんあるので、ぜひ」
「デート?
あぁ、確かにデートかもしれませんね」
彼女はバックミラー越しにボクと視線を合わせ、
にっこりと笑った。