7月26日からパリ五輪が開催される。
それに合わせてか、
パリにまつわる話題を目にする機会が増えた。
その中でとても驚いたのが、
大会組織委員会が冷房敷設を見送ったこと。
パリは歴史的建造物が多く、
壁に穴を開けるなどの改造が認められず、
室外機の設置を禁止する景観条例もあるのだとか。
国際エネルギー機関によると、
米国や日本の住宅でのエアコン普及率は9割にのぼるが、
フランスではわずか1~2割とされる。
そうした文化風習の良し悪しはともあれ、
現代の五輪は選手やチームが競い合う場であると同時に、
その能力を最大限に引き出すための、
なかでも選手のコンディション管理は、
最大の課題と言っても過言ではなく、
選手村に独自に冷房を設置する国もあるようだ。
この数年、過去の記録を塗り替える猛暑が増えたパリ。
それでも美的感覚とそれによる景観を、
頑なに守ろうとする姿勢には、
畏敬とうらやましさを感じてしまう。
もう1つフランスでの変わった法律について。
パリでは女性が男装をすることを禁じる条例が、
1800年に制定され200年以上残っていた。
男装とは大げさな表現で、
パンツルック、いわゆるズボンの着用禁止と、
日本の中学・高校の校則並の厳しさ。
隔世の感があまりにも強すぎて、
2周半くらいしてお茶目にすら思えるし、
罰則等がいつまで適用されていたかは疑問。
だが、2000年代初頭に幾度も廃止要求が出されるも、
当初は見向きもされなかったほど、
この条例の存続を願う勢力や風潮があった。
女性の権利省は2013年1月31日に、
「暗黙のうちに廃止されている」と発表。
長い紛争にピリオドが打たれた。
初めてパリを訪れたのは90年代後半の6月。
初夏の爽やかな空気に包まれた街を散歩した時に、
ボクの心を捉えたのは、
美しい街並みと、そこを舞うマロニエの綿帽子。
そして、とても上品にスカートの裾を揺らして歩く、
女性たちの姿だった。
「らしさ」との言葉が、
呪縛的なニュアンスも含むようになって久しい。
だが、忘れてはいけない「らしさ」があると、
ボクは思う。