「良い形で3月末を通過できたので、今年度もしっかりと」
メーカー販社の担当営業は、いつになく硬い表情だ。
「その話、午前中に部長ともしたよ」
ボクが軽くいなそうとしても、表情は崩れない。
「中途採用も含めて2人も新人が入りましたし。
ボクとしてはここが勝負どころかなと思います」
せっかく来たビールも、泡が消えかかっている。
「うんうん。ま、まずは乾杯しよう」
月イチの営業会議の後に飲むようになって、
もう3年目かな。
弊社の担当となった際に、
地元に馴染んでこそと、自ら単身赴任を申し出た。
その意気込みもあってか、業績は伸びている。
それでも「3年継続してやっと一人前」と気を緩めない。
昭和的と笑われそうだが、
その想いが弊社の社員にもお客さまにも伝わっている。
「とにかく、17年ぶりの記録更新、おめでとう。
で、ありがとう」
ようやく笑顔をみせると、並んだ料理を気持ちよく食べる。
普段は弁当ばかりだからだろう、
一度伸びた箸はなかなか止まらない。
「大変な1年になると思いますが、よろしくお願いします」
いつものように笑って別れた。