「いやいや。マジですか?」
ONSさんはボクの手を握り、何度も言った。
「こんなこと、あるんだね」
ボクもうれしくて彼の手を強く握り返した。
夜の会合を終えてホテルへと戻る前に、
タバコが吸いたくて立ち寄ったバーで、
永年お世話になった取引先の担当者とバッタリ。
彼は30年近く勤めた会社を昨年末で退職し、
自ら会社を設立。
その際にわざわざご連絡を下さっていた。
「自ら経営もせずに経営者のみなさんに寄り添うって、
ボクの年齢になるとかなり無理があるなぁ、と」
とてもていねいな仕事をされる方で、
弊社を関わってくれていた頃には、かなり頼りにしていた。
なので、退職にさみしさを感じながらも、
会社設立に驚きはなかった。
「コロナ騒動もあって電話でのご挨拶だけで失礼しちゃって。
いつお会いできるかと思っていたんです」
こんなにうれしい偶然、なかなか無い。
寄り道、良いもんだね。