「どうした? こんな時間に珍しいな」
電話口でKYSが訊く。
そりゃそうだよな。土曜の朝8時だもの。
「ちょっと遠出しようと走ってたら高速でパンクしたわ」
「はぁ? パ、パンク?
で、身体は大丈夫なのか?」
走り始めて1時間30分頃。
下道も高速もクルマが少なく順調で。
このままなら予定より早く中継地に着けるぞ。
勉強会の集合前に、いくつか寄り道できるかも。
欲張りな想いが頭をよぎってすぐだった。
リアタイヤの挙動がおかしくなり、
車体が細かく左右に振られ始めた。
「あれ? あれれ?」
バックミラーを確認しつつ減速して車線の左端を走り、
しばらく様子をうかがうが、路面が原因では無いようだ。
となれば・・・。
「マヂかよぉぉぉぉ」
ラッキーなことに1km先にPAの表示。
徐行しながらたどり着いて確認すると、
かなり空気が抜けていた。
落ち着け、オレ!
すべては落ち着いてからだ。
トイレを済ませ、喫煙ルームで一服。
その流れでKYSに電話を掛けたのだ。
「待て待て。まずは保険会社かバイク屋だろ?」
KYSが真面目な声で言う。
「いや、ま、フツーはそうなんだろうけど。
お前に蜜の味を楽しんでもらわなきゃと思って」
「アホか! もう切るからな。
さっさと手続きして、
その後の空き時間に電話よこせ」
「はーい」
バカ話のおかげで段取りがハッキリした。
保険会社に電話して必要事項を伝え、
レッカー車を手配してもらった。
地元のバイク屋に電話するも出ず。
どこもまだ営業時間外。
在庫確認もできないので、
なるべく大きなお店に目星をつけておく。
で、勉強会の幹事に電話。
身体はピンピンしているけど遅刻かもと報告。
「オレはもう現地に入っているので行けないけど、
メンバーの誰かしらはそこを通るはずだから、
立ち寄らせようか?」
不確定要素が多いし、
こんなことに巻き込んではいけないので、
お気持ちだけ頂くことに。
そこまで終えてしまうと、
バイク屋へ運んだ後の動きを考えるしか、
やるべきこともやれることもなく。
みるみるうちに空気が抜け、
ペッタンコになったリアタイヤを眺めながら、
大きなため息をついた。