会合に遅刻。
締めのあいさつだけを聞き、
手渡されたおみやげを持って歩いていると、
同じ歳の団体職員NNDIさんから声を掛けられた。
「相変わらずお忙しそうですね」
「今日のは単なるうっかりです」
自宅が同じ方向でもあり、
雑談をしながら歩いていて、
今日は夕飯を準備していないことに気づいた。
「ボクは何も食べてないので、
ちょっと寄り道して帰りますが、
よかったら1杯どうですか」
ボクが北海道へ移住した当時から、
いろんな会議や会合、
視察などでご一緒してきたものの、
これまで2人で飲むことはほぼ無かった。
さらにNNDIさんは1次会で飲み食いした後なので、
ダメもとで誘ったのだが、
快くお付き合い下さった。
彼はもともとこの町の出身で、
地元企業を支援する業務に35年近く携わっており、
町全体やその経済動向をはじめ、
同世代の人のことなど、
いろんな話をしてくれた。
「すみません。ボクばかり喋ってますね」
「いやいや。
ボクの質問に答えてくれてるだけですよ」
思い起こせばTORさんと初めてご一緒したのは、
NNDIさんから誘われた視察だった。
「顔合わせの時はすごくよそよそしかったので、
現地でどうなることかとハラハラしてました」
「それはボクも同じです。
今じゃお互いに遠慮のかけらもないですけど」
「あれからもう15年以上経つんですね」
「それを思うと還暦までの2年間なんて、
10代の頃の1ヶ月くらいの速さで、
あっという間に過ぎるんでしょうね」
あぁ、恐ろしい、と、
2人で顔を見合わあせて笑った。
「今日は誘って下さって、
ありがとうございました」
別れ際、NNDIさんは笑って手を振った。
「また近いうちに飲みましょう」
会合に遅刻したのは情けなく恥ずかしいが、
おかげで楽しい時間を過ごせた。
ありがとうございます。