Spiral-World

めくるめく世界での個人的な日記

深夜の乾杯

 気持ち悪く。しかも、トイレに行きたくなって起きた。

 起き上がって目を開けると、間違いなくKYSの家。ひとまず、安心。

 娘二人とKYSを起こさぬように、忍び足でトイレへ入り用を足す。で、部屋に戻って窓を開けてタバコを吸っていると、KYSが下の階からビールを持って来た。

「いつものことだが、よく起きたな」

 笑いながらグラスを差し出す。

「夜の便だって言ってたよな? 少しなら飲んでも大丈夫だろ」

「起こしちゃったか? 悪いな」

「いや。起きてたよ」

 嘘だ。コイツは昔からそういうところがある。

「明日からツーリングだろ? いのか、飲んで?」

 それには答えずビールを開けると、小さなグラスに注いで一気に飲んだ。

「大体の場所を決めて一人で走るだけだから。月曜スタートでも大して変わらない。気軽なもんだ」

 GWの走行距離は三千㎞を超えたという。

「走るのが楽しいのは良いけど、ちょっと過ぎちゃいないか?」 

「ぜんぜん無理してるつもりはないんだけど、楽しくてついな。ま、どっかの誰かが大きな事故してくれたから、同じ目に遭わねぇようにって慎重に乗ってるよ」

「そ、そうね。それなら良いけどさ」

「もう懲りたのか、バイクは?」

「さぁ、どうかな」

「この季節はうずくだろ?」

「そりゃ、まぁね」

「その気になったら言えよ。いいバイク屋を紹介してやる」

 ディスられてるのか勇気づけられてるのか分からぬまま、妙に苦いビールを飲んだ。